生活保護を受け始めてから、以前のようにお金の心配をすることは少なくなった!と安心する一方で、このままずっとここで暮らしていくの?と、ふと不安になることはありませんか?実際に引っ越しをする場合は、引っ越し代のほかに、新しい部屋の敷金・礼金・仲介手数料・保険料など、合計すると数十万円かかります。
実は、生活保護を受けている人が、近隣トラブルや住環境への不満などを理由に引っ越しを希望することは頻繁にあり、引っ越ししてもよいのか・費用は出してもらえるのかなどでモメてしまうケースも少なくありません。
今回は、「生活保護を受けながら引っ越しはできるのか」と疑問を持つ方に、引っ越しが認められるケースと認められないケースについて紹介します。
生活保護を受けながら引っ越しはできるのか?
引っ越し自体は自由です。
憲法では、国民の「居住・転居の自由」が定められています。
けれど、転居に必要な費用を出してもらえるのは、ケースワーカーから指導された場合や、住んでいる場所が取り壊しになった場合、施設に入る場合など、限られた場合だけ。
「今の部屋が気に入らない」「隣人が嫌」「もっと綺麗なところに住みたい」などの理由で引っ越しをする場合は、全ての引っ越し費用を自己負担しなければいけないことになります。
毎月の生活保護費の中から引っ越し費用を用意するのは現実的ではありません。
引っ越し費用を出してもらえる場合は?
費用を出してもらえるのは下のような人です。
- 退院が決まったけれど、退院後に帰る家がない入院患者
- ケースワーカーから転居を指導された人
- 国や自治体から土地収用を理由に立ち退きを強制された人
- 仕事を退職して社宅から転居する必要がある人
- 社会福祉施設の退所許可が下りて、帰る家がない人
- 宿泊提供施設等で一時的に生活していて、居宅生活の許可が下りた人
- 家主から高すぎる管理費や共益費を請求されるなどの不当な扱いを受けている人
- 勤務地が自宅から遠く、会社の近くに住むことが本人の自立を助けると認められた人
- 火災等で家が燃えて住めなくなった人
- 自宅が老朽・破損などで住むにたえない状況であると認められた人
- 家族の人数よりも明らかに狭い部屋に住んでいる人
- 病気、障害、高齢などに配慮した住宅設備が必要だと認められた人
- 親戚、知人宅等に一時的に身を寄せていた人
- 家主から退去するよう要求された人
- 離婚や内縁関係の解消によって、新しい部屋が必要となった人
- 介護を受けるために扶養義務者の近くに引っ越す必要がある高齢者や障がい者
- グループホームや有料老人ホーム、バリアフリー住宅への入居が必要と判断される場合
- DVやストーカー被害、近隣住民からの暴力被害などを受けたため、安全な場所に避難する必要がある人
出典:厚生労働省 社会・援護局長通知 第7-4-(1)-カ 転居に際し敷金等を必要とする場合
実際に引っ越しが必要な人が下のどれかに該当するのかしないのかは、その都度、福祉事務所が判断することになるため、なかには「住んでいる場所がかなり古くて壊れそうなのに、引っ越しを認めてもらえなかった!」という人もいると思います。これは、福祉事務所がまだ住むことができる部屋だと判断したからでしょう。
引っ越しは簡単には認めてもらえないのが現状です。
引っ越し費用を出してもらえる場合の引っ越しはどのような流れになるの?
引っ越し費用を出してもらえることが決まると、下のような流れで進んでいきます。
生活保護の申請をした時、住んでいる部屋が生活保護の家賃上限額を超えている場合は、転居指導をされるのが一般的です。転居指導をされた場合、引っ越しにかかるお金は全て出してもらえます。転居は下のような流れで進みます。
①転居指導 | 不動産屋で生活保護受給者が入居可能な物件を探し、速やかに転居するよう指導されます。 「生活保護を開始して一か月以内に」と指導される場合もあれば、「今住んでいる場所が更新を迎える前までに」と指導される場合もあります。 物件探しは一人で行うため、色々な不動産屋を回り、自分が希望する物件を探しましょう。 |
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②物件確認 | 希望の物件が見つかったら、物件の住所や家賃などが分かる資料を不動産屋からもらい、ケースワーカーに渡します。 ここで、家賃や敷金・礼金が上限額以内か、引っ越し先は生活保護の受け入れが可能なエリアかなどが確認されます。 |
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③契約 | 物件確認が終わったら、不動産会社と契約手続きをします。 契約の時にかかるお金は、福祉事務所で受け取って自分で不動産会社に支払うのが一般的です。福祉事務所が直接不動産会社に支払うケースや、ケースワーカーと一緒に銀行から振り込み作業をするケースもあります。 |
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④引っ越しの依頼 | 敷金・礼金等を支払って契約が終わったら、次は引っ越しの業者選びです。 どのように業者を選べばよいかまずはケースワーカーに確認してください。 おすすめの業者を紹介してくれる場合もありますが、一般的には自分で探します。何社か見積をとって、一番安い業者を探しましょう。 引っ越しが終わると、費用は福祉事務所から引っ越し業者に直接支払われます。 |
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⑤家庭訪問 | 引っ越しが終わったら、ケースワーカーが新しい部屋の確認にやってきます。 部屋にエアコンがない、窓に網戸がついていないなど、何か困ったことがあったら、このときに相談してみてください。 |
引っ越し費用を出してもらえない場合は?
上の条件以外の理由で引っ越しを希望する場合は、全ての引っ越し費用を自己負担しなければなりません。
東京都内に1Kのアパートを借りる場合、敷金・礼金・前家賃・引っ越し代などあわせると、トータルで40~50万円ほどかかります。かなり高額ですが、このお金を自分で用意して、全て自己負担で引っ越しをする人も中にはいます。生活保護費から少しずつ貯めてお金を準備する人、収入認定されない給付金を引っ越し代にあてる人、アルバイトをして増えた収入を貯めておく人など様々です。
ここで注意してもらいたいのが、自分でお金を払えば、無断で引っ越しをしていいわけではないということ。
住むエリアが変わると、担当のケースワーカーが変わるもしくは福祉事務所も変わるため、転居先のケースワーカーに引き継ぎをしなければなりません。
この引き継ぎには「自分の上司への確認」「転居先の福祉事務所の担当者への確認」「転居先の福祉事務所の担当者の上司への確認」があるため、自己負担で引っ越しをする場合でも、必ず先に担当のケースワーカーに報告する義務があります。
報告を怠ると、生活保護が打ち切りになってしまう場合もあるので注意してください!
引っ越し費用を出してもらえない場合の引っ越しはどのような流れになるの?
引っ越し費用を出してもらえず、自分のお金で引っ越しをする場合でも、希望の物件が見つかったら、契約する前にケースワーカーに報告する必要があります。
家賃が上限額以内か、転居可能な住所かなどを確認し、転居先の担当ケースワーカーや福祉事務所に、あなたが転居すること・転居先で引き続き生活保護を受けられるかどうかを相談する必要があるからです。
転居先の担当者から許可が下りたら、あなたの生活保護受給履歴が記載されている資料を、転居先の担当者に渡します。
引っ越しが終わって、ケースワーカーが新しい部屋の確認にやってきたとき、担当ケースワーカーが変わってから他にすることがあるのか、今後の流れなど、確認してみてください。
どうしても引っ越しをしたいときにするべきこと
引っ越しには時間と手間がかかります。引っ越し費用を出してもらえる条件ではないし、お金もない、でも、どうしても引っ越しをしたい!というときは、団地(都営・県営住宅など)に入居の申し込みをすることをお勧めします。当選すれば、広い間取りの部屋で安心して暮らせる可能性が高いです。
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