生活保護を受けている多くの人は一人暮らしの高齢者ですが、その他にも、外国人・母子家庭・父子家庭・夫婦・内縁関係の夫婦など、さまざまな世帯があります。
そんななか、「夫婦で生活保護を受けているけれど離婚したい。別々に暮らしていく場合、生活保護はどうなるのか」といった相談が時折あります。中には、離婚したいけど、生活保護を打ち切られるのは困るから仕方なく一緒に生活しているという夫婦も少なくありません。
今回は、「夫婦で生活保護を受けていて離婚したらどうなるのか」と疑問を持つ方に、結婚と生活保護の関係について紹介します。
夫婦で生活保護を受けていて離婚したらどうなるの?
「結婚は廃止になると聞いたことがあるけれど、離婚して廃止はないだろう」などと話す人もいますが、離婚によって生活保護が廃止になった人は多くいます。
夫婦二人の収入が最低生活費より低いからという理由で認められていた生活保護が、離婚によって世帯が分かれると、それぞれの世帯で再度生活保護が必要なのか計算されるからです。
廃止になるのはどんな場合?
生活保護が廃止になってしまうのは、例えば、下のようなケースです。
夫のDVのため離婚する夫婦。離婚後、妻が今住んでいる家賃20,000円の団地から別のアパートへ避難する予定。
最低生活費 | 世帯(夫婦)で140,000円 夫のみの場合 100,000円 妻のみの場合 100,000円+新居の家賃 |
収入 | 世帯(夫婦)で120,000円 夫のみの場合 120,000円 妻のみの場合 0円 |
医療費 | 世帯(夫婦)で20,000円 夫のみの場合 0円 妻のみの場合 20,000円 |
この場合、離婚することで妻は住む場所が変わり、家賃が変わります。また、妻には収入がないため、妻個人にあてられる生活保護費が増えます。
ところが、夫には病気がなく医療費もかかっていない・家賃は団地なので低価格。夫個人の最低生活費は生活費+医療費+家賃収入=100,000円となり、収入の120,000円を下回ることになります。
このため、妻は生活保護継続・夫は廃止となります。
離婚で廃止までの流れや手続きは?
離婚によってどちらか一方が廃止になる場合、離婚届を提出し、別居を開始した日の翌日が生活保護の廃止日になります。
同居している間は、生活保護費は日割り計算して支給され、医療費もこれまでどおり無料。
別居して廃止になると、生活保護廃止の通知が届きます。これを持って、国民健康保険への加入手続きなどをする必要があります。
廃止になった後は、これまで免除されていた医療費や公共サービスも自己負担になります。
慰謝料や養育費はどうなる?
離婚によって、養育費や慰謝料等が発生することもあります。
離婚相手から養育費を受け取った場合、生活費として渡されているものなので、「仕送り、贈与等の収入」として全額収入認定されます。
離婚相手から慰謝料を受け取った場合は、「保険金、その他の臨時的収入」として月8,000円を超えた部分の金額が収入認定されます。
20,000円の養育費を受け取ると、その月の生活保護費が20,000円減り、20,000円の慰謝料を受け取ると、その月の生活保護費が12,000円減ります。
継続できるのはどんな場合?
生活保護が継続されるのは、例えば、下のようなケースです。
夫のDVのため離婚する夫婦。離婚後、妻が今住んでいる家賃20,000円の団地から別のアパートへ避難する予定。
最低生活費 | 世帯(夫婦)で140,000円 夫のみの場合 100,000円 妻のみの場合 100,000円+新居の家賃 |
収入 | 世帯(夫婦)で80,000円 夫のみの場合 80,000円 妻のみの場合 0円 |
医療費 | 世帯(夫婦)で20,000円 夫のみの場合 0円 妻のみの場合 20,000円 |
この場合、夫も妻も生活保護は継続になります。
一見すると、夫には一応収入があるし、家賃も安いし、病気でもない。
何より妻にDVしていたような人間にお金を渡す必要はあるのかという感じもしますが、夫が一人で暮らす場合の最低生活費よりも夫の収入が低い限り、生活保護は継続になります。
生活保護が継続になるかどうかは、あくまでも最低生活費と収入の比較で決定されます。
継続の流れや手続きは?
離婚後、夫婦どちらも生活保護が継続する場合、一般的には、家に残る人はそのまま、出ていく人が新しく生活保護を開始します。
離婚届を提出し、相手が家を出た日の翌日から生活保護費は再計算されます。
出ていく人は、生活保護の開始のときに提出した書類を再度記入するように求められるかもしれません。また、引っ越しの手続きに必要な諸費用や新居の費用なども支給されるので、手続きが煩雑になります。
ケースワーカーに指定されたもとおりに動きましょう。
離婚に悩んだら、まずは相談しよう
あまり多くはないケースですが、生活保護を受けている人が離婚することは珍しくはありません。離婚後はどのような生活をしていくのか想定しながら、事前に流れを確認しておきましょう。
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