「生活保護を受けているけれど、年をとって一人暮らしができなくなったらどうすればいいんだろう」「親が生活保護を受けているけれど、高齢になったら施設に入ることはできるのか」そんな漠然とした不安を抱いたことはありませんか?
生活保護を受けている人の半数以上は高齢者です。認知症や病気で一人暮らしができなくなって、老人ホームに入る人はたくさんいます。そのことをよく知らずに、持病があるのに誰にも相談せず家で孤独死してしまう人も一定数います。
今回は、「生活保護を受ける方が年をとったら老人ホームに入れるのか」と疑問を持つ方に、生活保護を受けてから老人ホームに入るまでの流れを紹介します。
生活保護を受けている人は老人ホームに入れるのか?
生活保護を受けていて、高齢になってから老人ホームに入ることは可能です。
老人ホームに入る時には、今までの家を退去する費用・引っ越し費用・老人ホームに入居する時の頭金など、まとまったお金が必要になりますが、「高齢で介護が必要な状況」と判断されれば、これらの費用も支給されます。
「高齢で介護が必要な状況」の判断は、一般的には「介護度」の審査を受けてからどの程度の介護が必要なのか・もしくは不要なのかで決められることになります。
誰が見ても一目で分かるような重い状態の方でも、「介護度」の審査を受けないと入居はできません。
どんな流れになるの?
生活保護受給者が老人ホームに入る時は、下のような流れで進んでいくのが一般的です。
介護申請
介護サービスを利用したことがない人は、「介護サービスを利用するための申請」を先にする必要があります。
申請先は役所の介護保険の担当部署ですが、自力でできない場合や親族に頼めない場合などは、ケースワーカーに相談してみましょう。
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介護度の調査
介護サービスの申請手続きが終わると、介護保険の担当部署が「その人にどのくらいの介護が必要なのか」という調査をします。
入院中の人は病院で、自宅にいる人は自宅で面談するのが一般的です。この調査でたくさんの介護が必要だと認められたり、まだ介護は不要だと判断されたりします。
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入居先探し
介護度の調査によって「介護が必要」と認められ、ケースワーカーからも施設に入所することを認められたら、次は入居する老人ホームを探します。
自分や親族が入居先を探せる状態であれば、ケースワーカーに相談しながら、生活保護でも入居できる施設を探します。
今住んでいる場所の近くに老人ホームの空きがない場合は、入居先が遠方になる可能性もあり、一度入ると転居は難しいため、どんな施設があるのかよく調べておくことが重要です。
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施設の入所手続き
施設が決まったら、入居の契約や費用の支払いなどの手続きを進めます。
入所に必要な諸費用は、福祉事務所が直接施設に支払うのが一般的です。今住んでいる部屋の家財はほとんど処分する必要があるため、何が不要で何を持っていくのか決め、事前に整理しておく必要があります。
高齢や病気などで家財の処分ができない場合は、ケースワーカーに相談すると、家財処分を業者に依頼してくれる場合もあります。
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入居開始
手続きが完了したら、入居です。
毎月の生活保護費は施設利用料(部屋代や食費など)でほぼなくなることが多いですが、余った分は自由に使うことができます。
施設に入った後は、本人も家族も、穏やかな生活を送っている方が多いです。
一度入ったら出ることはできない?
老人ホームというと、死ぬまでの時間を過ごす場所というイメージがありますが、「この老人ホームは気に入らないから別のところに行きたい」「やっぱり一人暮らしがしたい」と考える人も、もちろんゼロではありません。
けれど、一般的に老人ホームに入る時は、敷金や入居金、移送費などのまとまった費用がかかります。このお金を生活保護から出している場合は、そう簡単には転居が認められないのが現状です。これは、アパートの引っ越し費用を生活保護で出してもらうためには要件があるのと同じです。
なかには、金銭トラブルや病状の悪化などで、施設側から退去をせまられてしまう人もいますが、多くの人は、一度入ったら亡くなるまで同じ施設で過ごしています。
老人ホームにはどんな種類があるの?
年をとって一人暮らしが難しくなったり、家族が介護できないときに入る施設を「老人ホーム」とまとめて呼ばれることが多いですが、老人ホームにはいろいろな種類があります。
本人や家族の希望によって、住みやすい場所は様々。どんな違いがあるのか知っておきましょう。
養護老人ホーム | 特別養護老人ホーム | 軽費老人ホーム(ケアハウス) | 介護老人保健施設 | サービス付き高齢者向け住宅 | 有料老人ホーム | |
根拠法令 | 老人福祉法20条の4 | 老人福祉法20条の5 | 老人福祉法20条の6 | 介護保険法8条の28 | 高齢者の居住の安定確保に関する法律 | 老人福祉法29条 |
特徴 | 虐待や借金などで生活に困った高齢者を保護して社会復帰を支援する場所。日常生活を自立して過ごせる老人が対象。 | 病状が重い高齢者(要介護3以上)が介護を受けながら生活する介護施設。費用が安いので入所待ちしている人が多い | 低額(軽費)で食事や洗濯などの生活支援を受けられる場所 | 在宅への復帰を目的に半年程度の短期間入所できる介護施設 | バリアフリーや見守りなど、高齢者が住みやすい設計のマンション。自宅のように自由に過ごせる | 介護が必要な老人が介護サービスを受けながら生活できる施設 |
運営 | 公営 | 公営 | 公営 | 公営 | 民営 | 民営 |
介護サービス | なし | あり | なし (介護型ケアハウスの場合はあり) | あり | なし (施設によってはあり) | あり |
生活費の支給 | なし 生活保護からは医療費のみが出され、その他の生活費は市町村から措置費として支給される | あり 介護施設入所者基本生活費と介護施設加算が支給される(約2万円程度) | あり | あり 介護施設入所者基本生活費と介護施設加算が支給される(約2万円程度) | あり | あり |
入所前の部屋の住宅費の支給 | なし | なし | なし | あり | なし | なし |
医療費の支給 | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
多くの方が、サービス付き高齢者向け住宅か有料老人ホームを利用しています。
老人ホームへの入所は慎重に検討しよう
施設に入るときは、本人の身体能力や通院先、親族との面会状況など、いろいろなことを考えて一番いい場所を選びます。生活保護を受けている人が老人ホームに入ると、基本的には生涯をそこで終えることになります。どこで暮らしていくことが自分にとって一番良いのかを考え、長く生活できる場所を選びましょう。
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