生活保護を受けている家庭の中には、母子世帯・父子世帯・夫婦が病気で働けないけれど子どもがいる世帯など、色々な事情の家庭があります。
このため、生活保護世帯から赤ちゃんが生まれることもあります。中には、「一度だけ関係を持った人との子どもを妊娠してしまった。でも出産したい」「父親が誰か分からないけれど妊娠したから出産した」「中絶したい」という相談も。その場合、父親不明でも出産費用は出してもらえるのか、中絶する場合は費用を出してもらえるのかなどが問題になります。
今回は、「妊娠・出産したらどうなるのか」と疑問を持つ方に、出産と生活保護の関係について紹介します。
子どもができたらどうなるの?
出産する場合は、「入院助産制度」や「出産扶助」という公的制度によって費用が出され、中絶する場合は、生活保護の「医療扶助」によって費用が出されるので、原則として自己負担はありません。
これは父親が誰か・生活保護を受けているかどうかに関係なく出される費用です。出産した後、子どもを自分で育てる場合には、子どもも生活保護を受けることになります。
出産するか中絶するかは本人が決めます。
生活保護を受給している女性の中には、不特定多数の異性との関係を繰り返してしまう人が一定数います。そういった女性が予定外の妊娠をして中絶を希望することもあれば、父親が不明だけど産むことを希望する場合も。
また、交際相手との間に子供ができて産むことにしたけれど、これまでどおり籍は入れず、一緒に暮らす予定もない、という人もいます。
病院はどうやって選べばいいの?
生活保護を受け入れている最寄りの病院を選びます。
ただし、出産する場所はどこでもいいわけではありません。児童福祉法に定められている助産施設として認可されている施設で出産することが原則となるため、自分の家の最寄りの施設はどこなのかケースワーカーや婦人相談員などに相談する必要があります。
助産施設とは?
経済的理由で、入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、助産を受けさせることを目的とする施設。
対象者
① 生活保護受給世帯
② 住民税非課税世帯
③ 市町村民税所得割の額が一定額以下の世帯
手続き
福祉事務所または区、市役所の窓口へ申請
例えば県立病院・市民病院・赤十字病院などが助産施設です。
助産施設で出産する場合は、生活保護からではなく、児童福祉法第36条の「入院助産制度」によって費用が出されることになります。
生活保護制度には、「他法他施策を優先させる」というルールがあるため、同じ公費であっても、出産の時には児童福祉法の「入院助産制度」を利用することになります。
やむを得ない事情があって助産施設で出産することができない場合や入院助産制度からは出されない衛生費のみ、生活保護の出産扶助が支給されます。
赤ちゃんのオムツやミルク、服を買うためのお金は出るの?
子どもが産まれたら、今まで以上にお金がかかります。妊娠してから生まれたあとに生活保護からもらえるお金は下になります。
妊婦加算 | 妊娠発覚~妊娠6か月 月7,760円~9,130円 妊娠6か月~出産まで 月11,720円~13,790円 ケースワーカーに母子手帳を提出した後に支給が始まります。 |
産婦加算 | 出産~産後6か月まで 月7,210円~8,480円 ケースワーカーに出生届の写しを提出した後に支給が始まります。 |
新生児衣料費 | 一回 52,700円 申請すると、新生児のために必要な物を購入できるよう、出産予定日の前後に一括して支給されます。 |
このほか、赤ちゃんが一人増えたことによって生活保護費も増額されるため、このお金で赤ちゃんに必要なミルクやオムツなどを購入することになります。
よく、生活保護は母子世帯に手厚い、と言われているように、生活保護世帯から生まれた子どもがちゃんとした環境で十分な教育が受けられるよう、様々な支援があります。
未婚のまま双子を出産した女性が、「こんなにお金が出るとは思わなかった。一人で心細かったけど本当にありがたい」と話していたことがあります。その女性は後に就職・再婚をして、生活保護を廃止になっています。
子どもが産まれたあとは何をすればいいの?
子どもが産まれたあとは、ケースワーカーと連絡を取りながら、下のように様々な申請をしなければなりません。
新生児の生活保護の申請と新生児衣料費の申請は、できるだけ早くしましょう。
生まれたばかりで手続きが多く大変ですが、全てお金に関わることなので、漏れなく行動しましょう。
子どもが産まれても安定した生活を送れるように
子どもが産まれたら金銭的に苦しくなるのではと不安に思う方もいますが、生活保護の場合は、加算などがつくので、普通に生活していればミルクやオムツ代に困ることはありません。妊娠が分かったら、ケースワーカーに相談し、最善の方法をとりましょう。
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