子どもが学校に入学したらどうなるの?

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生活保護を受けている家庭の中には、母子世帯・父子世帯・夫婦が病気で働けないけれど子どもがいる世帯など、色々な事情の家庭があります。

子どもが成長すれば、保育園・小学校・中学校と進学することになりますが、「保育料は払えるのか」「給食費は無料になるのか」「先生や学校の友達に生活保護がバレてしまわないか」など、心配ごとはつきません。

今回は、「子どもが学校に入学したらどうなるのか」と疑問を持つ方に、子育てと生活保護の関係について紹介します。

子どもが学校に入学したらどうなるの?

子どもが学校に入学すると、小学生の場合はランドセルや体操着、中学生は通学用鞄や制服などの入学準備が必要になります。このため、生活保護では、子供が小・中学校に入るタイミングで入学準備金を支給しています。このお金で、下の対象品目を買うことができます。

年齢金額(上限額)対象品目
小学校入学の時
64,300円ランドセル、靴、ワイシャツ、体育着など
中学校入学の時
81,000円学生服、通学用かばん、靴、ワイシャツ、体育着など

このお金の支給方法は福祉事務所によってまちまちで、現金で一律に支給される場合もあれば、それぞれの家庭が必要な額だけ支給される場合もあります。

私自身、これまで現金で一律に支給している福祉事務所を見たことはありませんが、事務の効率化などを求めて、今後増えていく可能性はあると思います。受給者としても、現金で一律に支給された方が申請の手間は省けますが、他のことに使ってしまわないように注意は必要です。

なお、この入学準備金のお金には、制服の買い替え費用なども含まれています。例えば、中学入学から1年でかなり身長が伸びて制服の買い替えが必要になった場合。入学準備金の上限額(81,000円)までは、お金を出してもらえることになります。

また、入学後は、高校生になるまで下のような費用も支給されます。

教育費
小学生 月2,600円
中学生 月5,100円
高校生 月5,300円
毎月の保護費と一緒に支給されます。
学級費(PTA会費)
小学生 月1,080円
中学生 月1,000円
を上限に支給されます。
教材代
教科書・辞書・楽器など、学校で必ず買うように指定されている教材の費用が支給されます。
学校給食費
費用が全額免除になります。
給食費は、生活保護から学校に直接支払われる(代理納付)のが一般的です。
通学交通費
徒歩で通えない範囲の学校に通学する場合は、バスや電車の定期代が支給されます。
校外活動参加費
課外授業や遠足などに必要な費用が支給されます。
例えば、交通費・宿泊費・施設利用料など。ただし、修学旅行の費用は支給されないため、自己負担となります。
学習支援費
子どもが学校の部活に入って活動するときに必要な道具やユニフォーム、シューズを買うときのお金が支給されます。
部費や大会参加費用、クラブ活動での交通費、合宿費用も対象です。

小学生 年間16,000円以内
中学生 年間59,800円以内
高校生 年間84,600円以内

年間は、4月から翌年3月までです。

通学交通費や校外活動参加費、学習支援費は、申請漏れがないよう気をつけましょう。これはお金を出してもらえるのかな?と疑問に感じた時は、必ず確認することが大切です。

受験を迎えたらどんなサポートがあるの?

子どもが中学3年生になって高校受験をする場合には、高校受験のための支援制度があります。

水嶋さら
水嶋さら

どこに進学するかは、本人の意志が尊重されます。

公立か私立かなども本人が決めますが、学費が割高で高額な自己負担が発生することが多いため、実際に私立に進学している世帯はあまりありません。

もし私立高校に進学した場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金などを借りることになるケースが一般的です。しかし、このお金も基本的には「返さなければいけないお金」なので、なんとしてでも公立高校に入れたいと考える生活保護世帯が多いのです。

生活保護では、高校受験から高校入学まで、下の費用が支給されます。

入学試験代
30,000円以内
入学料
公立高校 全額支給
私立高校 公立高校との差額分を自己負担
授業料
公立高校 全額支給
私立高校 公立高校との差額分を自己負担
教材費
購入必須のものは全額支給

大学に進学したら生活保護は廃止?

大学に進学すると、その子どもに対しては生活保護費が支払われなくなるため、高校卒業後に働くことを選択する子もいますが、最近では、給付型奨学金の充実などから、進学を選ぶ家庭が増えています。

水嶋さら
水嶋さら

大学に進学するかどうかも、本人の意志が尊重されます。

子どもが大学進学後も生活保護を受けている親と同居する場合は、子どもだけ生活保護は廃止されます。

世帯分離」と呼ばれる措置です。

この世帯分離は子どもが大学を卒業すると解除されますが、卒業後に就職した場合は、初任給の収入申告が必要になります。私の知っている生活保護世帯でも、多くのお子さんが大学に進学して世帯分離をし、卒業後に就職して生活保護が廃止になっています。一流大学に進学した子、大企業に就職した子など、「貧困の連鎖」を子どもが断ち切っている様子も多く見てきました。

中には、「私がママを養うのは嫌」と、就職と同時に一人暮らしをする子供もいました。

親と一緒に暮らしていると、収入によっては世帯ごと生活保護が廃止になりますが、一人暮らしをした場合は親だけ生活保護が継続になるからです。子どもには親の扶養義務がありますが、そうはいっても現実は難しいもの。ケースワーカーもそこについてはうるさく言いません。

大学の学費は?

大学進学にあたって必要な受験料や入学金などの費用は生活保護から支給されませんが、下のような制度を活用することができます。

大学進学にあたって活用できる制度
  • アルバイト代の貯金 大学進学後の学費等にあてるために、アルバイトでもらった給料を貯金にまわすことができます。事前にケースワーカーに相談して認定されると、アルバイト収入が収入認定されなくなります。
  • 進学準備給付金の申請 大学に合格した子どもが申請すると10万円(一人暮らしをする場合は30万円)が現金で支給されます。

大学の授業料は、下表のような奨学金制度を利用することになります。

日本学生支援機構奨学金収入等の条件により、利子のあるもの、ないもの、返済の必要のないものがあります。
生活福祉資金貸付制度社会福祉協議会の貸付制度です。利子はありません。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度ひとり親世帯への貸付制度です。利子はありません。
日本政策金融公庫教育一般貸付国の教育ローンです。利子があります。

生活保護を受けていても安心して子育てができるように

子どもの教育費で金銭的に苦しくなるのではと不安に思う方もいますが、生活保護の場合は、奨学金などの支援制度が充実しているため、教育費で困ることは少ないです。子どもの希望する進路に寄り添いながら、自立を促してあげましょう。

この記事を書いた人

社会福祉士・認定心理士の水嶋さらです!
1980年代生まれのアラフォー。都内在住。

これまで、福祉事務所や児童福祉施設、更生施設など、様々な福祉現場で働いてきました。
このサイトでは、生活保護を受けている方や、これから受けたい方に役立つ情報を発信していきます。

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