コロナ、物価高、低賃金・・・不安定な状況が続く中、「もう今月の生活費がない!」と途方に暮れたことはありませんか?
働きたくても病気で動けない・子どもが小さくて仕事ができない・多額の借金で身動きが取れない、など、色々な事情を抱えて困った人が増えてきています。生活に困ってどうしようもないまま相談する人もなく、犯罪に走ってしまったという悲しいニュースもあとを絶ちません。
今回は、「生活費に困ったらどこに相談すればいいのか」と悩んでいる方に、困ったときの相談先を紹介します。
生活費に困ったらどこに相談すればいいの?
手持ちのお金がなく、生活していくことができない人には、下のように多くの相談窓口があります。
福祉事務所 | 生活保護をこれから受けたい人と受けている人の相談窓口です。生活保護だけではなく、家賃や当面の生活費の借り入れについて相談ができる場合もあります。 福祉事務所は、通常、住んでいる場所の近くにあります。 場所や連絡先が分からない場合には、住んでいるまちの役所の代表番号に電話して、「生活保護の相談窓口につないでください」と言えばつながります。電話は基本的に、8時30分~17時の間しかつながりません。 |
社会福祉協議会 | 福祉事務所と似たようなことをしていますが、役所の組織ではなく、民間の組織というところが大きな違いです。通称、「社協」と呼ばれています。 生活に必要なお金を貸す「生活福祉資金貸付制度」や金銭管理をサポートする「日常生活自立支援事業」など、生活に困っている人を幅広くサポートしています。生活やお金、就職についての相談ができ、当面の食料を提供してくれるところもあります。 |
法律相談 | 多額の借金がある・離婚問題で生活に困っている・家族からDVを受けているなどのトラブルを抱えている場合には、弁護士に法律相談をするという方法もあります。 法テラス、自治体の法律相談などは、無料で相談できます。 |
医療機関 | 病気で働けない人は、要件を満たせば「障害年金」をもらえる可能性があります。 難病や障害・重い精神疾患などで通院している場合には、障害年金が受給できるかどうか、医師に相談することができます。 |
このほかにも、NPOやボランティア団体など、お金に関する相談先はたくさんあります。
どこに相談してよいか分からないけれどとにかくお金が底をつきてしまってどうにもならない場合は、福祉事務所で生活保護の相談をしてください。
「恥ずかしい」「怖い」「冷たい」といったマイナスのイメージがあり、生活保護の相談へ行くことへ抵抗があるのなら、まずは地域の民生委員や議員、ボランティア団体に相談してみても良いです。今後の生活について一緒に考えたり、申請に来て生活保護を受けるためのサポートをしてくれることもあります。
福祉事務所ってどんなところ?
生活保護をこれから受けたい人・受けている人の相談窓口で、通常は役所の建物の中にあります。
福祉事務所には、公務員のほかに、非常勤の社会福祉士、心理士、医師、就労支援員、婦人相談員などもいて、生活に困っている人たちの自立を多方面でサポートできる体制になっています。
私も、非常勤の相談員として、福祉事務所で働いていたことがあります。
福祉事務所に相談に行くのは、色々な意味でハードルが高いかもしれませんが、「生活保護を受けたい」と相談に行けば、その日のうちに申請できる場合もあります。
生活保護って何?
色々な理由で生活が苦しくなってどうにもならなくなった人にお金を支給し、自立できるように手助けする制度です。
「最後のセーフティネット」「健康で文化的な最低限度の生活を営むための権利」とも呼ばれています。
生活保護では、生活に必要な費用を下のように8つの項目に分けて、支給しています。
生活費 | 衣食・光熱費など、日常生活に必要な費用です。毎月、現金で支給され、使い道は制限されていません。 支給される生活費は、下のように計算して、家族ごとに支給されています。 生活費=第1類(家族一人一人に必要な生活費)+加算(小さい子どもや病気のある人がいる家族など)+第2類(1家族に必要な光熱水費) |
教育費 | 小さな子どものいる家庭には、教科書代や給食費などが支給されます。 現金で支給されるか、学校に直接支払われます。 |
住宅費 | 家賃や家の修理代などの費用です。 家賃は毎月現金で支給されるか、住んでいる部屋の管理人に直接支払われます。 家の修理代は、必要になったときに、修理業者に支払われます。 |
医療費 | 病院にかかったときの医療費です。 美容医療などの自由診療以外は、全て生活保護から支給されます。 病院に直接支払われるので、現金の支給はありません。 |
介護費 | 介護サービスを受けるための費用です。 業者に直接支払われるので、現金の支給はありません。 |
出産費 | 出産にかかる費用です。 病院に直接支払われるので、現金の支給はありません。 |
仕事等で必要な費用 | 仕事を始めたり、高校に入学するときにかかる費用です。その都度現金で支給されます。 |
葬祭費 | 生活保護受給者が亡くなったときの火葬代です。火葬後、遺骨の引き取り手がない場合は、役所が引き取り、無縁仏として処理されます。 |
生活保護の相談をしたらどんなことを聞かれるの?
生活保護の相談員からは、これまで歩んできた人生のことを細かく聞かれます。
不正受給ではないのか・本当に生活保護が必要なのかを見極めるためでもありますが、その人にあった支援を考えていくためにも、下のような情報が重要になるからです。
相談で色々なことを聞かれて、生活保護を受ける必要があると判断されれば、申請に進んでいきます。
条件を満たしていない場合、例えば、収入が高い・それなりの預金残高があるなどの場合は、他に利用できるサービスや制度を紹介してもらうことができる場合もあります。
水際作戦って本当にあるの?
生活保護が必要な状況なのに、「若いから働きなさい」「家族のところに帰った方がいい」などと言って生活保護の申請を阻止する「水際作戦」。大切な税金から出ている生活保護費を誰でも簡単に手に入れられるのは困りますが、本当に必要な人までもを追い払ってしまうことが以前から問題となっています。この、「水際作戦」は令和の現在でも本当にあるのでしょうか?
答えは「自治体によるが、今はあまりない」です。
もちろん、なんだかんだと理由をつけて相談者を追い払う自治体もまだありますが、親身に話を聞いた上で申請のサポートをしてくれる自治体や、簡単に申請ができる自治体が増えてきました。
というのも、北九州市や横浜市で実際にあった事件のように、露骨な水際作戦をして相談者を追い払った結果、後でその人が餓死してしまったり、告発されてニュースになってしまうリスクをよく知っているからです。ニュースにまではならなくても、議員を通じて課長に告げ口される・訴えられる・余計な恨みを買うなどのリスクもあります。
このため、露骨な水際作戦をする自治体は、最近ではあまりなく、相談に来た人の話を聞いて慎重に扱うように変わってきています。 それでも、どうしても申請に進ませてくれない場合には、「今日、申請をしたい」と話してみてください。
ポイントは、「今日」と「申請」です。
厚生労働省は、各自治体に、生活保護を希望している人の申請権を侵害しないこと・侵害していると疑われるような行為をやめるように通知しています。
つまり、申請を断る権利は相談員にはなく、生活保護の申請書類が提出されたら受け取って処理する義務があるのです。この義務が発生する前に、あれこれと理由をつけて申請を阻止しているとも言えますが、実は、誰にでも申請する権利があるのです。
生活費に困ったら、一人で悩まず早めに相談を
生活保護というと、世間からの厳しい目、受けることへの抵抗、家族にバレてしまうことの恐怖など、ネガティブなイメージを抱く人がいたり、制度自体を知らない人が多く、本当に必要な人のうちの2~3割程度しか利用できていないのが現状です。
困ったときは、「誰にでも受ける権利がある」ことを正しく理解して、胸を張って活用してください。
生活保護を利用するのは、あなた自身の権利です。
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